2019年11月15日金曜日

IBMの障害者向けインターンシッププログラム「AccessBlue」

はじめに

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下IBM)では、2014年から毎年「AccessBlue」という障害学生・既卒5年以内の人向けのインターンシップを実施している。

 筆者は2017年のプログラムに参加したので、その時の経験を基にこのプログラムについて紹介する。なお、この記事は筆者の見解と経験のみに基づいて作成されており、IBMの考えや公式な見解とは一切関係がない事、プログラムは毎年変更されるためここで書いたことが今年度または未来のプログラムにおいて当てはまるとは限らないことについて、ご理解いただいたうえでお読みいただきたい。

 参加をお考えの方、人に紹介する方などの参考になれば幸いである。

 公式の案内は毎年11月頃にこちらのページに掲載される。ここから応募書類や公式の案内、説明会の情報もゲットできる。記事執筆時点で、既に2019年参加者の応募要領が公開されている。

どんなプログラムか、何が体験できるか

 一言でいうと、3~9月の7か月間、いろんな障害を持つ仲間と、他分野のことを広く体験するプログラムである。  具体的には、以下のようなことを体験する。

  • 社会人としての心得、ビジネスマナー基礎、会社施設や設備の使い方など新人社員研修の一部
  • 目標管理・進捗報告、最終聖火発表などの振り返りプロセス
  • プログラミング、データサイエンス、ウェブページ制作などエンジニア業務の基礎学習
  • 本プログラム卒業生やIBMの先輩・役員など先輩からの講話や座談会
  • 技術営業体験

    IBMの営業職の方が顧客の役を演じ、フィードバックももらえる本格的な場が用意される。

  • 新規ITソリューションの提案とプロトタイプ開発

     ネット検索すると過去の例がたくさん出てくると思う。  私のグループでは、小学校で毎日児童が書く日記から感情を推定し、暗い話題ばかりを書く児童に対して大人が声をかける参考とするソリューションを提案した。スクールカウンセラーなどの利用を想定し、支援の必要な児童に声をかけるきっかけになればといったものであった。

  • 実際の仕事の現場で1~2週間のOJT(On the job training)

参加に向いている人、いない人(各項目内は順不同)

  • 前提条件など
    • 文系・理系・男女・障害種別は関係ない
    • PC知識ゼロはきついが、長文入力とブラウザでのネット閲覧程度ができる人はどうにかなる
    • 参加対象は学部2年次(応募が12月~1月で、その時点で大学生である必要があるため)~卒業後5年以内の就職浪人者まで
    • 英語スキルはなくても大丈夫(あればそれに越したことはないが、周囲の文系に頼めば乗り切れるのさ!)
    • リモートワークやグループワークでのリモート会議などをするので、自宅にネット回線は欲しい。必須ではないが、ないメンバーいるといろいろ辛いなあと…。
  • 向いている人

    • IBM箱崎事業所(半蔵門線水天宮前駅他)まで授業を考慮しても週1回程度は通えそうな人

      授業開講期間中は関西からのフルリモート勤務者までいたので、必須ではない ただ、東京近郊に住んでいるのにこれができないほど学業が忙しいのだと「参加しても仕事できるのか?」という問題が浮上する。

    • 学部1・2年次生、文系の3年次生までを推奨

      実際に1・2年次で応募する方も多い。今後の就職活動に向けて、必ず役立つはずだ。

      就職活動とインターンの両立はかなーり辛い。例えば、理系3年次生が授業+試験+レポート各種+就職活動にさらにプラスでこのインターンを入れるのは…正直辛い。3年次生に年内(12月まで)内定とか言われる業界もあるので、よく考えて参加してほしい。。

      なお、「もし可能ならばIBMに入社したい!!!」と思っているのなら上の学年でも是非チャレンジすべきだ。実際にIBMやIBMグループの企業に入社した先輩がいる。

    • 何かを深めるより、「視野を広げたい、いろんなことを経験してみたい」と考える人

      7か月あるが、大学での専攻も全く違うメンバーが、細切れ出社で多くの内容に取り組むという特徴のためどうしても個々のプログラムの濃さは他のインターンに勝てない。

      一方で、これだけ多くの種類の体験をさせてくれるインターンもなかなかない。視野を広げる、いろんなことを体験してみるといった心づもりで参加してほしい。

      視覚障害の私は、JAWSという高級な(約15万)画面読み上げソフトを使うというだけでも貴重な経験だった。 リモート勤務の利点と欠点とか、社会人の会議のやり方とか、IBM社員のカタカナ英語会議とか、長期インターンならではの気づきもたくさん得られる。

    • 実際にいろいろなことを体験し、自分の障害特性の理解を勧めたい人、他人への得意なこと・支援の必要なことなどを明らかにしたい人

    • どんな職種が自分に向いているかわからない人
    • 大企業に興味のある人

      大企業と中小ではいろんなことが異なる。大企業を体験したい人にはオススメのプログラムだ。

    • 障害者の仲間が欲しい人

    • インターン経験が他で望めそうにない人

      今後就職活動する際にインターン経験はよく聞かれる。空白はもったいないので何かに参加しておくべきだ。

  • 向いていない人

    • 具体的なITスキルの習得が目的の人

      上記の通り、このインターンを通じてプログラミングができるようになったとか、ウェブデザイナーとしての素養が身に付いたとか、そういった「技術的な成果」を得るのは難しい。

    • 給与を当てにしている人

      「バイトの代わり」と考えての参加はお勧めできない。 確かに東京と最低賃金+αのお給料を頂ける大変ありがたいプログラムであるのだが、3~8月分勤務に対する給与からは実際の勤務日数に関係なく「フルタイムでの出勤をした場合の給与とそれに伴い毎日出社する前提の交通費」から算出された厚生年金および健康保険の保険料2万円以上が天引きされるので注意が必要である。日本の法律の穴なので仕方ない。IBMは悪くないのである。

      特に、通勤時間が長い人はその部分も考慮して考えるべきである。

    • 今の家族での健康保険を抜けるとヤバイ人

      自治体によっては国保加入でないと各種医療費支援を受けられない場合があるとかないとか、世帯合算での払い戻しを受けるときにどうと書こうとか…。IBMの健康保険組合に移ることになるので、医療費を多く使っている人は念のため確認を。

Q&A

過去に私が後輩から聞かれた質問や、知っておくとよさそうなことをQ&A形式で紹介します。

Q.どのくらいの勤務が求められるの?

A.既卒の人はフルタイムで毎日勤務する(全員リモート勤務という日もある)。学生は、自分の授業などの予定を考慮していつ出社するのかを毎月事前に届け出る。週2・3日の勤務(リモート含む)とする方が多く、予定の変更やサークル合宿・就職活動などがあっても、事前に連絡すれば柔軟に応じてもらえる。

Q.勤務に際して事前に必要な準備は?

A.春休み中にほぼ毎日出社するので、それに対応できるだけのスーツの購入が必須。PCなどは会社から貸与される。

Q.IBMを受けるなら何か優遇があるの?

A.何もないと思う(あるとは言われないが、実際のところは闇の中)。ただ、IBM社員(主に人事と研究所所属)と毎日でも会える、質問し放題の環境に立て、OJTで現場の一部も間近で見られるのでかなり有利ではないだろうか。

Q.競争率は高いの? 応募したら採用されるか心配…

A.毎年定員は30名程度だが、定員いっぱいの参加はない。一方で、全員が合格しているわけでもない。エントリーシートはきちんと考えて書き、面談にもしっかりと準備をして臨む必要がある。

Q.採用されたら、定期券買った方がいい?交通費の清算は?

A.利用路線にもよるが、全員リモートの日や提携先企業への出社などもあるので既卒の方も含めて定期券の購入はオススメできない。回数券が一番お得だと思われる。なお、会社からの交通費は、出社日数×片道費用×2で算出して支払われる。月末締め翌月15日払い。

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